東京高等裁判所 昭和26年(う)597号 判決
本件記録を調査するに、本件起訴状記載の公訴事実は被告人は昭和二二年二月一五日頃自宅において宗秉郁に対し同人が強盜に使用することの情を知りながら拳銃一挺を貸与し、よつてその頃同人他数名がこれを使用して犯した橫浜市鶴見区馬場町一八二番地吉田文吉方の強盜を幇助した旨であるのに、原判決の認定(第一事実)は被告人は右日時頃同所で松田こと禹啓命に対し同人が強盜に使用することの情を知り乍ら拳銃一挺を貸与し、よつてその頃同人外数名がこれを使用して犯した右吉田文吉方の強盜を幇助した旨であることは所論のとおりである。
しかし、共同正犯は互に手となり足となり一心同体となつて、一定の犯罪を実現するものであるから、共同正犯を幇助した場合においては、被幇助者たる正犯が共同正犯中の甲であるか、乙であるかは幇助行為の同一性に影響がない。
本件公訴事実並に原判決認定の事実は要するに、被告人は共同正犯者の一人に拳銃一挺を貸与することによつて正犯の右吉田文吉方の強盜を幇助したということにあるのであるから、その貸与を受けたものが宗秉郁であろうが禹啓命であろうと右吉田文吉方の強盜正犯を幇助したことには変りはなく、公訴事実の同一性には何等影響のないものと認めるのを相当とする。従つて宗秉郁に拳銃一挺を貸与して右吉田文吉方の強盜正犯を幇助したという事実に対し、禹啓命に右拳銃一挺を貸与して右吉田文吉方の強盜正犯を幇助したと認めても公訴事実は同一であつて公訴の提起のない事実について判決したものとは認められない。
原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。